HONEYHONEY1950〜60年代アメリカ文化と、それを扱う店の記録

リーとラングラーの年代判定|リーバイス501とは別の見方が要ります【2026年版】

2026年10月9日 公開

リーとラングラーには、赤タブもパッチも隠しリベットもありません。だからリーバイス501の年代判定で使った手順を、そのまま当てはめることはできません。

この記事は、その2社ぶんです。501の記事で「いずれ別に書きます」と書いた約束の回収でもあります。

先にお断りしておきます。この記事は手がかりの整理であって、鑑定ではありません。

そして501の記事と同じく、メーカー自身が公表している年と、コレクター資料でしか出てこない年を分けて書きます。この2社は、501より公式に書かれていないことが多いので、分けておかないと判断できません。

先に、いちばん大事なこと

リーもラングラーも、昔のモデルの復刻を、いま公式に新品で売っています。

ラングラーの日本公式は2025年12月に1951年・1958年・1964年のモデルを、リーの日本公式は1930年代から1970年までのモデルを復刻しています。

つまり「Wのステッチがある」「Lazy Sがある」といった特徴は、それだけでは古さの証拠になりません。

詳しくは下に書きますが、この一点を頭に置いてから読んでください。501より復刻の比率が高いのが、この2社を見るときの前提です。

その前に:2社の成り立ちが違います

リーラングラー
始まり 1889年、カンザス州サライナの食料品の卸売会社 1904年、ノースカロライナ州グリーンズボロのオーバーオール工場
服を作り始めた 1912年に自前の縫製工場 最初から作業着の会社
ジーンズの名前 最初から「Lee」 長く「ブルーベル」。Wranglerの名は1943年に買ってきた
西部向けの看板 1925年の 101 1947年の 11MWZ

ここがいちばん効きます。ラングラーのジーンズは、リーの101より22年遅れて世に出ています。「どちらが古いか」で迷ったら、まずこの差を思い出してください。

リー ── 公式が年を出している項目

年できごと
1889H.D. Lee Mercantile 創業。食料品などの卸売
1912最初の縫製工場。オーバーオールと作業用ジャケット
1913一体型のつなぎ Union-Alls
1925カウボーイ向けの 101(大人用)と 101B(子ども用)。Jelt デニムも同年
1927ジッパー(Whizit)を採用。リー社は「衣料メーカーとして最初」と書いています
1946101 Lee Riders に「Lazy S」の飾りステッチと、革の Twitch ラベル
1947女性向けの Lady Lee Riders
1969VFコーポレーションが買収。2019年に Kontoor Brands へ

食い違っている項目

項目リー社の公式ほかの資料
Lazy S の開始 1946年 1944年とするものがある
ジッパーの採用 1927年 1926年とするものがある
「101Z」という型番 米国の公式年表には出てきません 日本のリー公式は101Zと呼んでいます(復刻の商品名)

2年のずれなら、公式のほうを採るのが筋だと思います。ただ「101Z」については、日本の公式サイトが堂々と使っているので、呼び名としては通用すると考えてください。

コレクター資料にしか出てこない項目

以下はメーカーの公式に裏づけが見つかりませんでした。見かけたら「そう言われている」として扱ってください。

  • 毛付きの革パッチ(hair-on-hide)は1936年から、とするもの
  • ® の表示は1960年代から、MR(登録商標のスペイン語表記)は1970年代から、とするもの
  • 「UNION MADE」の表示は1970年代半ばまで、とするもの

※「Crown Lee」という呼び名も見かけますが、公式にもコレクター資料にも出典を見つけられませんでした。この記事では扱いません。

ラングラー ── 公式が年を出している項目

年できごと
1904Hudson Overall 創業
1919Blue Bell Overall に改称
1926Big Ben Manufacturing と合併。ブルーベルの名は残る
1943Casey Jones 社を買収し、「Wrangler」の商標を手に入れる
1947仕立屋 Rodeo Ben がデザインした西部向けジーンズを発売
1963サンフォライズド加工の14オンスデニムを使い始める
1986ブルーベルがVFと合併。2019年に Kontoor Brands へ

公式に書かれていない項目

ラングラーは、ここが501と大きく違います。古着の売り場でよく語られる手がかりの多くが、公式年表に出てきません。

よく言われること実際のところ
11MWZ → 13MWZ への改称は1952年 13オンスのデニムに因む、という説明が広く出回っていますが、公式年表には出てきません
ブロークンツイル(綾の向きが途中で変わる織り)の開始 1964年・1960年代半ば・1967年と、資料ごとに割れています。公式の記載なし
ラベルから「Blue Bell」が消えた時期 どこにも確かな出典が見つかりませんでした。1960年代半ばとする記述はありますが、裏が取れていません

「ブルーベル表記だから1960年代前半」と言い切る説明を見かけたら、その年の根拠は示されていないはずです。年代の幅を決める材料にはなっても、年を特定する材料にはなりません。

【訂正】「ラングラーが世界初のジッパー仕様ジーンズ」は成り立ちません

これはよく見かける説明ですが、両社の公式年表を並べるだけで崩れます。

リーがジッパーを採用したのは1927年。ラングラーのジーンズが出たのは1947年です。

20年の差があります。ラングラーのジーンズが世に出た時点で、リーのジッパー仕様は20年の歴史がありました。

※ただし「世界初」を断定するのも避けます。1927年という年は、リー社が自社について書いているものです。他社の記録と突き合わせたわけではありません。確実に言えるのは「ラングラーが最初、という説明は両社の公式年表と矛盾する」ところまでです。

【訂正】13MWZ の「13」は、2つの説があります

  • 試作を13回繰り返したから——ラングラー側が語っている話
  • 13オンスのデニムだから——コレクター資料や辞典系の説明

どちらかが嘘だと決めつける材料は、こちらにはありません。両方あると知っておくのが正確です。

復刻が、公式に新品で売られています

冒頭に書いたことを、具体的に。

ラングラー(日本公式 ARCHIVES)

復刻しているモデル内容
11MW 1951年モデル 内股も脇も巻き縫い。後ろポケットの「W」はステッチを目立たせない仕様
11MWZ 1958年モデル ボタンフライではなくジッパー。革ラベルがプラスチックに替わった時期を再現
11MWZ 1964年モデル 脇を割って耳を見せる仕様。茶と緑の線の専用セルビッジ生地

2025年12月13日発売、ジーンズは35,200円(税込)。1951年と1958年のモデルは日本製です。

リー(日本公式 ARCHIVES/REAL VINTAGE)

1930年代から1970年まで、幅広く復刻しています。101B の1930年代モデル、101 の1945年モデル、101Z の1948年・1952年・1954年モデル、1962年のWESTERNER、1970年のRIDERS 200——といった具合です。

※在庫は入れ替わります。ここに挙げたのは「どの年代が復刻されているか」の目安で、いま買えるという意味ではありません。

これが判定にどう効くか

ディテールで古さを証明しようとすると、行き止まりになります。

  • 巻き縫い、脇割り、セルビッジ——全部、現行の復刻にあります
  • ジッパーとボタンフライの違い——どちらも復刻されています
  • 革ラベルかプラスチックか——これも年代ごとに作り分けられています

忠実に作ってあるほど、ディテールでは区別がつかなくなる。501の記事に書いたのと同じ話が、この2社ではもっと強く効きます。

では、どこを見るか

日本の古着屋で手に取るなら、内側のタグがいちばん速いです。501の記事に詳しく書いた話が、そのまま使えます。

見るところ分かること
品質表示タグ 繊維の組成・洗濯記号・表示者名の3点。これが揃っていれば、日本で新品として売られたものです
洗濯記号の世代 記号は2016年12月1日と2024年8月20日に変わっています。いまのJIS記号なら、タグは2016年12月以降
そもそもの状態 60年前のズボンが、擦れも色落ちのムラも無く均一に美しいのは不自然です
値段 相場から大きく外れて安いものには、外れている理由があります

この見方の詳しい中身は、501の年代判定のほうに書いています。品質表示の3点セットも、洗濯記号が3世代に分かれる話も、そちらです。

※中古品として売られる古着に、品質表示の義務はありません。「タグが無い=偽物」ではありません。使えるのは「現代の日本の品質表示タグが付いている=当時のアメリカ製そのものではない」という向きだけです。

日本で買えるところ

当サイトが記録している、USヴィンテージの古着を扱う店です。

店扱い・状況
SAMANTHA(大阪市中央区西心斎橋) 30〜60年代のUSヴィンテージ。営業中ですが移転しています
STUD MUFFIN(静岡県菊川市加茂) 古着・ヴィンテージのセレクトショップ。曜日で営業時間が変わります

デニムを軸にしていた店は、当サイトの記録では閉店しています。大阪・アメ村の BIG MAN がその代表でした。この12年で何が起きたかは、2014年の47店をたどり直した記録に書いています。

そのほかの店は都道府県別の全国リストに、通販のみの店は通販で買える店にまとめています。

この記事について

当サイト HONEYHONEY は2014年から、50's・60'sのアメリカ文化と、それを扱う店を記録しています。

年と事実関係は、以下で確認しました。

  • リーの公式な沿革 — 1889年の創業、1912年の工場、1925年の101/101B、1927年のジッパー、1946年のLazy S
  • ラングラーの公式な沿革 — 1904年の創業、1919年のブルーベル改称、1943年の商標取得、1947年の発売、1963年の14オンス
  • 両社の日本公式の復刻ライン — 復刻しているモデルの年代と仕様
  • コレクター向けの英語資料(複数)— 公式に記載のない項目。資料ごとに食い違うため、本文でもそう書いています

※この記事は鑑定ではありません。この2社は公式に書かれていないことが501より多く、年を一本に決められない項目が残ります。そして、迷ったら買わないのがいちばん確実です。