復刻品の見分け方|年号ではなく「あとの時代の印」で年代を決める
2026年10月9日 公開
復刻品には、年号が入っていることがあります。1934年の復刻トレイに「1934」と刷ってある。1950年代のデザインを写した缶に、その年が入っている。年号は、作られた年を意味しません。デザインの元になった年です。
では何を見るか。答えは「あとの時代にしか存在しない印」です。バーコード、郵便番号の桁、著作権表示、プラスチックの三角マーク。これらは法律や規格で始まった年がはっきりしているので、年号より確かな手がかりになります。
この記事の立場。
ここに並べる年は、法律の条文・政府機関の資料・規格団体の公式発表から取っています。「その印があれば、その年より後」という一方向の話だけを書きます。逆(無ければ古い)は言えません。理由は最後に書きます。
【ここが核心】1950年代には、まだ無かった印
1946年7月5日
1963年7月
1974年6月26日
1975年1月2日
1978年
1983年
1988年
1995年
赤い帯の印は、1950年代には存在しません。どれか1つでも見つかれば、その品は50年代のものではありません。右端がぼけているのは、今も使われているからです。
それぞれの根拠
| 印 | 意味すること | 出典 |
|---|---|---|
| UPCバーコード | 1974年6月26日以降。オハイオ州トロイのマーシュ・スーパーマーケットで、午前8時すぎに最初の1点が読み取られました | スミソニアン |
| 「Reg. U.S. Pat. & Tm. Off.」 | 1975年1月2日以降の言い回し。それ以前は「Reg. U.S. Pat. Off.」でした | 合衆国法典15編1111条 |
| JANコードの頭2桁が「49」/「45」 | 49は1978年以降、45は1995年以降。日本の国コードです(下に詳しく) | GS1 Japan |
| アメリカの住所に5桁の郵便番号 | 1963年7月以降 | 米議会調査局 |
| 郵便番号が「5桁−4桁」 | 1983年以降 | 米議会調査局 |
| プラスチックの三角に1〜7の数字 | 1988年以降。米国プラスチック工業協会が作った樹脂識別コード | ASTM |
※®(丸にR)そのものは、1946年7月5日の法律で定められた表示です。50年代のものにも入っています。これ単独では年代の決め手になりません。
著作権表示(©)の読み方
ここが、1980年代の品を見分けるときに一番効きます。
アメリカの著作権法では、1978年1月1日から1989年2月28日までに公表された著作物には、著作権表示が必要でした。そして1989年3月1日以降は、表示は任意になりました。
著作権局が示す表示の形は、3つの要素でできています。
- © か、copyright か、copr. のいずれか レコードの音源は ℗
- 最初に公表された年 この年号が、実際の手がかり ただし「公表の年」であって、その品の製造年とは限りません
- 著作権者の名前 「© 1984 ○○社」という並びになります
ここから何が言えるか。
「© 1984」と入っていれば、その図案は1984年以降に作られたものです。1950年代の品に1984年の表示は入りません。復刻品に当時のデザインを使っていても、新しく作り直した図案には、その年が入ります。
逆に、1978年から1989年2月までは表示が義務でした。この時期の正式なライセンス品には、©表示が入っている可能性が高くなります。ただしこれは傾向であって、決まりではありません。表示を落としても、条件を満たせば著作権は失われない規定があったからです。
原産国の表示
アメリカへ輸入される品には、原産国を表示する義務があります。1930年関税法304条にもとづくもので、税関の規則にはこう書かれています。「目立つ場所に」「英語の国名で」「品物の性質が許すかぎり、読みやすく、消えにくく、永続的に」。
つまりアメリカで売られた輸入品には、原則として原産国が入っています。これが手がかりになります。
| 表示 | 読み取れること |
|---|---|
| MADE IN OCCUPIED JAPAN | 占領期のもの。占領は1952年4月28日のサンフランシスコ平和条約の発効で終わります。この表記が求められ始めた年については、コレクター資料が1947年とするものの、こちらで一次資料を確認できませんでした |
| MADE IN JAPAN | 占領期の前後どちらもあり得ます。これだけでは年代は決まりません |
| MADE IN TAIWAN | 1970〜80年代の雑貨・玩具に多く見られます。ただし年の範囲を示す公的な資料は見つかりませんでした |
| 原産国の表示が無い | アメリカ製か、表示の義務が及ばない品か、表示が消えたか。「無いから古い」とは言えません |
日本側の印(日本で売られたもの、日本で作られた復刻)
アメリカのものでも、日本で正式に売られた品には日本の表示が付きます。そして日本国内で作られた復刻品には、日本の印が付きます。
| 印 | 意味すること |
|---|---|
| JANコードが「49」で始まる | 1978年以降。日本の国コードが決まった年 |
| JANコードが「45」で始まる | 1995年以降。「49」が足りなくなって追加されたもの |
| 郵便番号が7桁(3桁−4桁) | 1998年2月2日以降。それ以前は3桁または5桁でした。店の袋、説明書、保証書で効きます |
| ◇PSE または ○PSE のマーク | 2001年(平成13年)4月の法改正以降。電気用品取締法が電気用品安全法に変わったときのものです |
| 〒マーク(甲種・乙種) | 電気用品取締法の時代の表示。1961年制定の法律にもとづきます |
| 現行のJIS洗濯記号 | タグは2016年12月1日以降。2024年8月20日にもう一度変わっています |
電気ものを買うときは、ここが実務的に効きます。
ジュークボックス、ネオンサイン、冷蔵庫、コカ・コーラの自動販売機。アメリカの50年代の実機は100Vでも周波数でも日本の家庭用と条件が合いません。正規に輸入・整備されたものには、たいてい何らかの表示が付いています。
◇PSE/○PSEが付いていれば、2001年4月の改正より後に国内で扱われた品です。当時のままの実機ということにはなりません。整備や改造が入っている可能性が高い、と読むのが自然です。
※衣類の場合は、家庭用品品質表示法の3項目(繊維の組成・取扱い表示・表示者名)が付きます。洗濯記号の3世代の表は、デニムの記事に載せています。素材そのものの扱い方は素材別の手入れの記事へ。
具体例:コカ・コーラのトレイ
この分野でよく知られた例です。1930年代のサービングトレイには複数の復刻があり、1934年のデザインを写した復刻品には「1934」と入っています。
コレクターの資料では、オリジナルには図柄の下端に印刷業者の名前が入っていて、復刻には入っていないという見分けが伝えられています。
※この見分け方の出典は、コレクターの資料です。当サイトでは、公式の資料で裏を取れていません。そのつもりでお使いください。ただし「年号ではなく、年号以外のところを見る」という考え方そのものは、上の表と同じ方向を向いています。
【注意】この方法で言えないこと
ここが一番大事です。これらの印は一方向にしか効きません。
| 言える | 言えない | |
|---|---|---|
| バーコードがある | 1974年より後 | — |
| バーコードが無い | — | 1974年より前とは言えない。箱を捨てた、剥がれた、そもそも小売を通さない品だった——理由はいくらでもあります |
| © 1984 と入っている | 1984年より後 | — |
| ©が無い | — | 古いとは言えない。1989年3月1日以降は表示が任意です |
| 三角のリサイクルマークがある | 1988年より後 | — |
つまり、これらの印は「新しい」ことの証明にはなりますが、「古い」ことの証明にはなりません。
そして——これが復刻品を扱ううえで、一番現実的な結論です。当サイトがヴィンテージデニムの記事でも、耐熱ガラス5社の記事でも繰り返してきたことと同じになります。細部の意匠では古さを証明できません。メーカー自身が復刻を売っているからです。
証明できるのは、逆方向だけです。新しい印が1つでも見つかれば、それは新しい。見つからなかったときは、「新しいと分かる印は無かった」としか言えません。
手に取ったとき、どこを見るか
- 裏・底・内側を見る 印はたいてい見えないところにあります プラスチックの三角、刻印、ステッカーの跡
- 文字の並びを読む ®、©+年号、Reg. U.S. Pat. & Tm. Off. 「& Tm.」が入っていれば1975年以降です
- 数字の列を探す バーコード、郵便番号、JANコードの頭2桁 箱や説明書が残っていれば、そちらにあることも
- 何も見つからなかったら そこで止める 「新しいと分かる印は無かった」が、言える範囲のすべてです
最後に。復刻品が悪いわけではありません。復刻だと分かったうえで買うのと、そうでないのとが違うだけです。店で聞けば、たいていの店は教えてくれます。都道府県別の全国リストと通販で買える店にまとめてあります。
この記事について
使った資料。
- 合衆国法典15編1111条(商標登録の表示)と、1975年1月2日の改正(Pub. L. 93-596) — ®と「Reg. U.S. Pat. & Tm. Off.」
- アメリカ著作権局 Circular 3 — 1978年1月1日/1989年3月1日の区切りと、表示の3要素
- 連邦規則集19編134.11条(1930年関税法304条の施行規則) — 原産国表示の義務
- 米議会調査局 — 1963年7月の5桁郵便番号、1983年のZIP+4
- ASTM International — 樹脂識別コードは1988年に米国プラスチック工業協会が作成
- GS1 Japan(流通システム開発センター) — 1978年に国コード「49」、1995年に「45」を追加
- 日本郵政グループ年表 — 1998年2月2日の郵便番号7桁化
- 電気製品認証協議会 — 電気用品取締法(1961年制定)から電気用品安全法(平成13年4月の改正)へ、〒マークからPSEマークへ
- 消費者庁 — 家庭用品品質表示法の表示事項とJIS洗濯記号
- スミソニアン — 1974年6月26日の最初のUPC読み取り
- 外務省 — サンフランシスコ平和条約の発効(1952年4月28日)
この記事で「確認できなかった」と書いたもの。「MADE IN OCCUPIED JAPAN」の表記が求められ始めた年。「MADE IN TAIWAN」が使われた年の範囲。コカ・コーラのトレイの印刷業者名による見分け(コレクター資料のみ)。電気用品安全法の施行の正確な月日(こちらで当たった資料には「平成13年4月の法改正」までしか書かれていませんでした)。
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